『カンパニーマン』
(CYPHER 2002)
『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリの新作だが、まったく存在すら知らなくて未チェックのままだった。
「暗号」「(暗号を解く)鍵」「アラビア語でゼロ、無」を意味したりする抽象的な原題に対し、劇中台詞から引用したそれっぽい邦題を冠したのはなかなか秀逸なタイトリングセンスだろう。
ъ(・∀・)GJ!
産業スパイとして雇われた平凡な主人公が身分を偽って潜入するのだが、その先々で謎めく美女の影がちらつき、やがて2重スパイを持ちかけられ、はたまた更にその裏で暗躍するエージェントの存在なども明らかになってくるという、そんな軽く不条理なフィリップ・K・ディック的展開に。
監督曰く「カフカとジェームズ・ボンドの融合」だそうだが、ヴァイオレンスやアクションになりそうな要素を極力抑えたストイックな演出で仕上げているので全体になにやら地味。なんだけど透明な清潔感のある映像やツイストさせたストーリー進行で、割りと飽きさせない佳作。
そもそも何故そんなことをする羽目になったのかという根本的な理由もシンプル過ぎて笑えるゆえに好感が持てるし、あっさりした“意外な真相”も今や逆に新鮮かも知れない。
しかし、なんといっても主人公にとっての“ファムファタール”的な謎の美女として登場する、赤毛ショートカットのウィッグを被ったルーシー・リューが想定範囲外の魅力で喫驚する。実はそれこそが本作に対して《血みどろ番外地》的に最も高い評価ポイントなのであった。
ただ『ミッション:インポッシブル』のトム・クルーズよろしく、変なスーツとワイアー装着でジャンプしてグーンと迫ってくる仰望ショットがあるのだが、そこがルーシー・リューの真剣な無表情さと相俟って、やけに可笑しく笑えた。
あと関係ないけど、特典映像のインタヴューを見るまで、なぜかヴィンチェンゾ・ナタリのことを女流監督だと思い込んでいた。たぶん“ナタリー”だと思ったんだろうけど、そっち姓だからwwwww
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